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2010/02/05

ガーデン・ロスト/紅玉いづき

4048682881ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)
アスキーメディアワークス 2010-01-25

by G-Tools


誰にでも、失いたくない楽園がある。息苦しいほどに幸せな安住の地。しかしだからこそ、それを失うときの痛みは耐え難いほどに切ない。誰にでも優しいお人好しのエカ、漫画のキャラや俳優をダーリンと呼ぶマル、男装が似合いそうなオズ、毒舌家でどこか大人びているシバ。花園に生きる女子高生4人が過ごす青春のリアルな一瞬を、四季の移り変わりとともに鮮やかに切り取っていく。壊れやすく繊細な少女たちが、楽園に見るものは―。



残酷なまでの等身大の青春小説。

紅玉いづき氏の新作。この方は1年に1冊しか、本を刊行してくれない。そのせいもあってか、本が出る度に喜ばしい気持ちになる。
作者の根幹は変わらずに、毎回違う世界を見せてくれるから。1年に1冊の出会いが、とても尊いものになるのだ。

作者がこれまで書いてきたファンタジーものとは違った、現実の女子高生達を描いた作品だった。
今より少しだけ前の女子高生の生活。作者がリアルタイムで感じたであろう現実世界。それらが凝縮され、濃厚な雰囲気を醸し出していた。

彼女達の感じる世界は、一人ひとり全く別のもので。観測者が変わることによって、世界が如何様にも変化するのだという事を、禍々しくも鮮烈に感じ取る事が出来る。
何が正しくて、何が正しくないか。そんな事は誰にも定義できない。彼女達の現実。その1つひとつが正しいものなはずだ。

彼女達は花園を失った。失わなくてはならなかったのだろう。誰しも時の流れに逆行する事は出来ないのだから。
花園を失ったのではなく、1つの過程を過ぎ去ったのだ、と私は解釈する。彼女達には、また新しい場所が用意されているはずだ。それが花園かどうかは分からない。だが人には何かしらの居場所が必要なのだ。望む望まぬに関わらず。

今より少しだけ前。まだ携帯電話がさほど普及していなかった時代。そんな時代に生きた女子高生達を描いた、生々しい青春小説だった。
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□MW文庫 | Comments(0) | Trackback(2)
2010/01/16

探偵・花咲太郎は閃かない/入間人間

4048682229探偵・花咲太郎は閃かない (メディアワークス文庫)
アスキー・メディアワークス 2009-12-16

by G-Tools


あらすじ

「推理は省いてショートカットしないとね」「期待してるわよ、メータンテー」ぼくの名前は花咲太郎。探偵だ。浮気調査が大事件となる事務所に勤め、日々迷子犬を探す仕事に明け暮れている。…にもかかわらず、皆さんはぼくの職業が公になるや、期待に目を輝かせて見つめてくる。刹那の閃きで事態を看破する名推理で、最良の結末を提供してくれるのだろうと。残念ながらぼくはただのロリコンだ。…っと。最愛の美少女・トウキが隣で睨んできてゾクゾクした。でも悪寒はそれだけじゃない。ぼくらの眼前には、なぜか真っ赤に乾いた死体が。…ぼくに過度な期待はしないで欲しいんだけどな。これは、『閃かない』探偵物語だ。



レビュー

ロリコン・花咲太郎は嘆かない

現実に居そうな探偵を描こうとした。だけど出来なかった。そんな作品。
MW文庫という新しいレーベルから出版された作品だが。内容は入間人間氏の電撃文庫作品のスピンオフである。
みーまーちゃんの8巻で異彩を放っていたロリコン探偵にスポットライトを当てた作品に仕上がっている。ロリコンというある種の社会の癌的な存在を扱う入間人間氏は流石というか、何というか。

殺人事件等には全くの興味がない探偵。しかし連れている女の子が、メタ視点で云う所の探偵気質。そのせいで死体との遭遇率が高くなってしまっている。
本人の望まぬ所で事件に遭遇する。そして解決してしまうパターンが多い。解決と云い切ってしまうには、疑問が生まれる事件も在るが。
本人が犬・猫専門探偵を謳っているだけで、実際には花咲太郎という探偵は優秀なのではないだろうか。本編中に見受けられた見落としは、やる気がないから閃かなかったとも云える。真面目に推理をすれば名探偵も夢ではないのかもしれない。

花咲太郎という存在が名探偵になったとしたら。それはそれで面白い作品だろう。だが花咲太郎は閃かないからこそ面白いのかもしれない。
本書の5章の中で、探偵が殺し屋と絡んだシーンを見ていると、この作品の目指すものが何だか分かったような気がする。
緊張感がないのだ。探偵と殺し屋。2つが揃えば、時間に追われるようなサスペンスが始まっても可笑しくないような要因なのだ。だが本文中での2人の邂逅からは、目が回るような展開に発展する事はなかった。ただの自転車の追いかけっこをしただけなのだから。

花咲太郎はローカルな探偵なのだろう。地域密着型なのだ。
何だかんだ云って、実は町を愛しているタイプだ。町に根を張って生きていこうとするタイプの人間だ。町の平和を祈る探偵。安寧を望む探偵。だが事件には遭遇してしまう。そんな探偵が地べたに這いつくばって歩み続ける姿が、この作品の面白さになり得ているのかもしれない。
爽快感はない。大きな感動もない。だけど魅力的なキャラクターが事件に振り回されているのを観劇するのは面白い。すごく良いキャラクター小説なのだろう。魅力の在るキャラクターを生み出せているのだから。
□MW文庫 | Comments(0) | Trackback(0)
2010/01/12

[映]アムリタ/野崎まど

4048682695[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)
アスキー・メディアワークス 2009-12-16

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あらすじ

自主制作映画に参加することになった芸大生の二見遭一。その映画は天才と噂されるつかみどころのない性格の女性、最原最早の監督作品だった。最初はその天才という呼び名に半信半疑だったものの、二見は彼女のコンテを読み始めた直後にその魅力にとりつかれ、なんと二日以上もの間読み続けてしまう。彼女が撮る映画、そして彼女自身への興味が二見を撮影へのめりこませていく。そしてついに映画は完成するのだが―。第16回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作。



レビュー

天才監督と凡庸役者の活動写真。

芸大で自主制作映画を撮る話。冒頭から世界に引き込まれた。私は本を読むときに付箋を使う。気になった箇所にベタベタと貼るのだ。この本に使った付箋は、普段読む本の3倍は在ったかもしれない。もしかしたらそれ以上かもしれない。それほどまでに気になる部分が多かった。感銘を受けた部分も多いのだが。それと同時に己の中で解釈を仕切れない部分も多かった。

天才という存在は扱うのが難しい。凡庸な人間には天才の思考は理解できないからだ。この作品の天才・最原最早が、それだ。理解が及ばない。それはこの物語の主人公も同じ事だろう。理解したつもりで天才で挑んだ所で、天才と同じフィールドには立てるはずもない。天才というカードが物語りの中で切られたら、凡才は何もできなくなるだろう。天才に踊らされるだけなのだ。

最初はこの物語を青春小説だと認識したのだが。読み進める内に、その印象がコロコロと変わった。ミステリのようになり、SFのようになり、オカルトファンタジーのようになり。私の思考はあちらこちらへと飛ばされた。読み終わった時には混乱していた。そして純粋な恐怖が生まれた。
一概にこれだ、とジャンルを確定するのは難しい。私の中でも暫く結論は出ないだろう。ずっと出ないのかもしれない。
この小説は凡庸な役者が、天才の掌の上で踊らされた喜劇なのだろうか。それとも天才と凡才による、純粋な愛の物語なのだろうか。私には上手く説明できないようだ。

これまで私が読んだ本の中にも、幾人かの天才が登場した。それらの天才達は、未だに私の心の中で暗躍している。私に希望を与えたり、絶望を与えたりしているのだ。
最原最早という天才も、そういった存在になってしまうだろう。彼女も紛う事無き天才なのだから。
□MW文庫 | Comments(0) | Trackback(0)
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